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「写真との対話」  森山大道


図書館の書庫保管になっていた森山大道のこの本「写真との対話」、書庫保管という事はかなり古い本になり、かつ借り手もあまり居ないということだろう。



大道の周辺を歩き回っている日々の私は、彼が何を見、何を撮り、何を書き記しているのか、知りうる限りの情報を得たいと思っている。しかし、図書館にもなかなか行けないものですね、師走だから。




この本に書かれている内容は、その題名の通り大道と写真とがどのように対峙しているものか、であって、先に購入した「もうひとつの国へ」とは、色合いがかなり違っている。


「もうひとつの国へ」は、そのあとがきにあるように「写真に関係しないもの」として書かれたエッセイ。


どちらも大道自身が目の前で語っているような読み口は同じ、何度読んでも面白かろう。




「・・・つまり、僕の日頃の認識として、自分自身を含めた人間、およびそれの在る世界は決して美しいものなどではなく、むしろきわめて醜悪なものとして映っているし、現在がバラ色の時代だなどという楽天的な幻想も決して無いわけである。ただし、だからといって、僕の写真の粒子の流れが、そのまま世界の荒廃を意味しているとか、ブレが時代の流動を意味しているとかいう、判じ物的概念の絵解きなどでは全くない。僕自身が存在し関係を持っている、そうしたグロテスクでスキャンダラスで、きわめてアクシデンタルな人間と世界のなかで、それでは一体自分の生とは何か?といった絶え間のない自己認識の手段として、僕はカメラを持っているつもりなのだ。だから、それらの認識を踏まえたうえで、極力観念や言葉の要素を排除した、生理的、感覚的なものとして写真を考えているわけである。」




大道の写真に惹かれるのは、やはり私自身の生活や世界感、人生に対する認識に共感するものであるからに違いないのである。



人生は、生活は、いつでも哀調を帯びモノトーンやセピアに彩られている、というのが私の認識なのであろう。


しかし、その中にハッとするような美しく鮮やかな色が偶然にも現れたり、時折は自分で見つけたり、それが生きていく理由なのだろうと思う。



「写真との対話」  森山大道_b0365619_18184497.jpg







by e_pandako02 | 2008-12-13 20:07 | 読書

鎌倉で暮らし始めて3年が過ぎました。忙しい日々の中見つけたイイものを綴ります。

by MOON GLOW
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